▮混合ワクチン
混合ワクチンとは
子犬・子猫は生まれてからしばらくは、母親から譲り受けた免疫で感染症から守られます(移行抗体)。
しかし残念ながらその免疫は長続きせず、免疫は徐々に低下していきます。ワクチン接種をすることにより免疫力を高め、病原体を感染させない、感染したとしても重症化させないようにします。
また、ウイルスによる伝染病の治療は困難であり、特効薬もありません。特に、レプトスピラ感染症はワンちゃんだけでなく人にもうつる恐ろしい病気です(人獣共通感染症)。
これらの伝染病からワンちゃんネコちゃんを守るためには、ワクチン接種による予防が有効となります。
ワクチン接種の時期
✓ 子犬・子猫の場合
生まれてすぐの初年度は、しっかりと免疫をつけるため
2~3回の接種が必要となります。
詳しい接種時期や接種回数などはご相談ください。
✓ 成犬・成猫の場合
子犬・子猫の時にワクチン接種することで得た免疫で、一生病原体から守られるわけではありません。
愛犬・愛猫を感染症から守るためにも年1回の定期的なワクチン接種を実施しましょう。
犬のワクチンの種類
当院で扱っているワクチンの種類です。
5種混合ワクチン
・ 犬ジステンパー
・ 犬アデノウイルス(2型)感染症
・ 犬伝染性肝炎
・ 犬パラインフルエンザ
・ 犬パルボウイルス感染症
8種混合ワクチン
・ 犬ジステンパー
・ 犬アデノウイルス(2型)感染症
・ 犬伝染性肝炎
・ 犬パラインフルエンザ
・ 犬パルボウイルス感染症
・ 犬コロナウイルス感染症
・ 犬レプトスピラ病(イクテロヘモラジー、カニコーラ)
① 犬ジステンパー
高熱・目ヤニ、鼻水が出て、元気や食欲がなくなり、嘔吐や下痢もします。
病気が進むと神経系がおかされマヒなどの後遺症が残る場合があります。死亡率の高い病気です。
② 犬アデノウイルス2型感染症(犬伝染性喉頭気管炎)
発熱、食欲不振、クシャミ、鼻水、短く乾いた咳が見られ、肺炎を起こすこともあります。
他のウイルスとの混合感染により症状が重くなり、死亡率が高くなる呼吸器疾患です。
③ 犬伝染性肝炎
発熱、腹痛、嘔吐、下痢がみられ、目が白く濁ることがあります。
生後1年未満の子犬が感染すると、全く症状を示すことなく突然死することがあります。
④ 犬パラインフルエンザ
風邪症状がみられ、混合感染や二次感染が起こると重症になり死亡することもあります。
伝染性が非常に強い病気です。
⑤ 犬パルボウイルス感染症
激しい嘔吐、下痢を引き起こし、食欲がなくなり、急激に衰弱します。
重症になると脱水症状が進み、短時間で死亡することがあります。
伝染力が強く、死亡率の高い病気です。
⑥ 犬コロナウイルス感染症
成犬の場合は軽度の胃腸炎で済むことが多いが、犬パルボウイルスとの混合感染では重症化することも。
子犬の場合は、嘔吐と重度の水様性下痢を引き起こします。
⑦ 犬レプトスピラ感染症
レプトスピラという細菌が原因で、イクテロヘモラジー型、カニコーラ型、ヘブドマディス型などがあります。
発熱、嘔吐、下痢、黄疸、多飲多尿など消化器疾患、腎疾患、肝疾患に関連する多くの症状がみられます。
人間にも感染する人獣共通感染症です。
何種の混合のワクチンを接種すれば良いのかは、一概には決められません。
室内犬であるか室外犬であるか、ドッグランなど多くの犬が集まる場所に行くか、海や山、川などに行くか、地域でその感染症が流行しているのか……など、様々な飼育環境によって、何を接種するのかを判断する必要があります。
飼主様のライフスタイルに合わせて一緒に決めていきましょう。
ご不明な点がございましら、お気軽にご相談ください。
猫のワクチンの種類
当院で扱っているワクチンの種類です。
3種混合ワクチン
・ 猫ウイルス性鼻気管炎
・ 猫カリシウイルス感染症
・ 猫汎白血球減少症
5種混合ワクチン
・ 猫ウイルス性鼻気管炎
・ 猫カリシウイルス感染症
・ 猫汎白血球減少症
・ 猫白血病ウイルス感染症
・ 猫クラミジア感染症
① 猫ウイルス性鼻気管炎
咳やクシャミ、発熱、鼻水などの風邪の症状が続きます。
目ヤニなどが多くなり、角膜炎や結膜炎を引き起こします。感染力が強く、他のウイルスとの混合感染も多い
ため、特に子猫の場合重症化しやすく死亡する場合もあります。また、回復してもウイルスは体内に残り、ス
トレス等で再発することもあります。
② 猫カリシウイルス感染症
咳やクシャミ、鼻水、発熱など風邪に似た症状が続き、悪化すると舌や口の周りに水疱や潰瘍がみられ、肺炎
を起こすこともあります。他のウイルスとの混合感染で合併症などを引き起こすと死亡する場合もあります。
回復後もウイルスを排出し、感染源としても注意が必要です。
発熱、腹痛、嘔吐、下痢がみられ、目が白く濁ることがあります。
生後1年未満の子犬が感染すると、全く症状を示すことなく突然死することがあります。
③ 猫汎白血球減少症
猫パルボウイルス症としても知られており、最も危険な急性感染症のひとつです。子猫や若い猫に発症が多く
嘔吐、強い腹痛、血様下痢、高熱、急激な脱水などの症状がみられ高い死亡率を示します。
④ 猫白血病ウイルス感染症
免疫機能の抑制、貧血、リンパ腫の原因となり、症状は様々です。一般的に感染猫の唾液や鼻汁との長期接触
つまり、グルーミングや食器の共有によって感染が成立します。発症すると治療が難しい深刻な病気のため、
予防と感染の拡大を減らすことが重要な病気です。
⑤ 猫クラミジア感染症
おもに子猫が発症し結膜炎と上部呼吸器症状がみられ、感染が持続することもあります。まれに、一過性の
発熱、食欲不振や体重減少が起こります。猫同士の接触でうつり、まれに人への感染もおこります。
3種ワクチンは伝染力が極めて強い急性感染症を予防します。室内飼育であってもすべての猫ちゃんにおすすめしています。
すでに鼻気管炎等の症状が出てしまっている猫の症状の悪化を抑える効果もあります。
5種ワクチンは野外に頻繁に出る猫ちゃん、外に出なくても網戸越しなどで野良猫と接触の可能性がある猫ちゃんにおすすめしています。
ワクチンの副反応
ワクチン接種後にアレルギー反応を起こす事がまれにあります。
可能性は低いながら、アナフィラキシーショック(血圧低下)という重篤なアレルギー反応を起こす事もあり、これは緊急治療をしないと命にかかわります。
アナフィラキシーショックは通常接種直後~30分以内に発生しますので
ワクチン接種の後はしばらく院内、もしくは病院の近くで様子をみていただいた方が安心です。
その他の反応として、顔が腫れる(血管浮腫)、蕁麻疹、嘔吐、下痢、発熱、元気消失、注射部位の疼痛や硬結があります。
これらの反応は遅いと半日~1日位経ってから症状が出る事もありますので
ワクチンはなるべく午前中に接種する事をお勧めします。
(夕方接種すると深夜に症状が出てしまう可能性があります)。
ワクチン接種後の注意
ワクチン当日はワクチンアレルギーの症状がでないか、
帰宅後も様子を見てあげてください。
注射後2~3日間は安静につとめ、激しい運動、シャンプーなどは控えてください。
免疫(予防効果)が得られるまでの2週間は、他の動物との接触を控えてください。
▮狂犬病
狂犬病ワクチン接種と登録をしましょう
狂犬病は発症すると、ほぼ100%亡くなってしまう大変怖い病気です。
また、感染したわんちゃんに噛まれることで人にも感染する「人獣共通感染症」でもあります。
狂犬病予防法により、わんちゃんの登録と年1回の予防注射は義務化されています。
現在、日本では狂犬病の発生はないとされています。
しかし近隣国では未だ狂犬病の発生は多く、いつ日本に侵入してくるかわかりません。
狂犬病の蔓延を防ぐため、飼い主の皆さんがしっかりと意識を持って、狂犬病のワクチン接種をうけさせることが大切です。
狂犬病ってどんな病気?
狂犬病には
・ 潜伏期間が長い
・ 明確な治療法がなく死亡率が100%
という特徴があります。
このため、咬まれた後しばらくは何事もなかったかのように生活できても気づいた時には手遅れになってしまうんです。
感染経路 | 病原体は感染動物の唾液に含まれ、咬まれることで伝染 |
---|---|
主な症状 | 異常行動、けいれん、麻痺など |
潜伏期間 | 長い(犬で1~2か月、人で1~3か月) |
治療方法 | なし(死亡率は犬・人ともに100%) |
登録手続き
川崎市にお住まいの方は、当院で狂犬病予防注射登録手続きが行うことが可能です。
(横浜市の方も代行手続きを行うことが可能です。詳しくはご相談ください)
市から届いた案内をお持ちのうえ、ご来院ください。
ワクチン接種後に、証明書とわんちゃんにつけていただく注射済票をお渡しできます。
ご不明点がございましたら当院スタッフまでお問い合わせください。
▮ノミ・マダニ予防
ノミ・マダニってどんな虫?
体の表面から血を吸う小さな寄生虫!
○ ノミ
ノミは約3㎜と小さく、毛の間を逃げまわります。探してもノミ自体が見つかるよりもノミの糞が見つかることの方が多いです。ノミの糞は黒い小さな粒で、湿らせたティッシュの上に置くと、赤茶色の色素ががにじんできます。
○ マダニ
マダニは他のダニと比べると大型で、3-10mm程度です。成長段階や吸血の有無で大きさや形態を変化させます。
森林だけはなく、市街地の植え込みや公園の茂みにも生息しています。
マダニはクシバシを皮膚に差し込んで固定し吸血します。もし見つけても無理に引っ張ってはいけません。
1回のノミ予防で、全てのノミはいなくなる?
いいえ!定期的なノミ予防が大切です。
目に見えている成虫のノミは、じつはたったの5%!!
あとの95%は卵、幼虫、さなぎの状態で周囲に隠れています。
これらの未成熟期のノミを根絶するためには、定期的なノミ予防でノミのライフサイクルを断ち切ることが必要です。
新たに侵入してくるノミに備えるためにも、1回だけでなく定期的なノミ予防が重要です。
ペットへのノミの被害は?
アレルギーを起こしたり、病原体をうつすことも。
○ ノミアレルギー性皮膚炎
ノミに繰り返し吸血されることで、ノミアレルギーになってしまうことがあります。
ノミアレルギーは非常に強い痒みを伴い、少数の寄生でも症状が出るようになってしまいます。
アトピー性皮膚炎の子では、ノミ寄生により症状が強く出てしまうので、予防がとても重要です。
○ 瓜実条虫(サナダムシ)
体長50cm以上になることもあるサナダムシ。
条虫の卵を宿したノミをさらに犬や猫が食べてしまうことにより寄生します。
下痢や嘔吐の原因となります。
マダニが媒介する怖い病気
死に至る恐ろしい病気も…
○ SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
マダニを媒介とするウイルス性感染症です。
主に吸血によって人にも動物にも感染し、発熱や消化器症状、血小板減少などがみられます。
SFTSは、2011年に新しいウイルス感染症として報告され、人において感染者と死亡者が続出しています。
○ 犬バベシア症
バベシア原虫が犬の赤血球に寄生して破壊します。貧血、発熱、食欲不振、黄疸などが見られ、急性の場合は死に至ることもあります。
○ 猫ヘモバルトネラ症
ヘモバルトネラフェリスという細菌による感染症です。
猫が感染すると、貧血、元気消失、体重減少、食欲不振などの症状がみられます。
感染した猫が出産すると、仔猫にも菌が移行します。
また、輸血によっても感染することがあります。
どうやって予防するの?
1か月に1度、予防薬を使います。
1か月に1度、予防薬を使いましょう。
首の後ろに垂らす「スポットタイプ」、おいしく食べれる「おやつタイプ」があります。
詳しくはご相談ください。
予防は夏だけでいい?
年間を通しての予防しましょう!
ノミやマダニは気温が下がると活動性が低下します。
「じゃあ、予防しなくてもいいんじゃない…?」と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。
活動性が低いだけで、ノミやマダニは寄生するタイミングをうかがっています。
ノミは部屋の中の暖かい場所を見つけ出し、そこに潜んでいることもあります。一度侵入してしまうと繁殖が止まりません。
またマダニですが、秋の時期から大量に産卵して幼ダニが孵化してくる時期で、意外かもしれませんが秋はマダニのピークシーズンなんです。
寒い時季にこそ、年間を通したノミ・マダニ対策の必要性を再認識してほしいと感じます。
▮フィラリア(犬)
フィラリア症ってどんな病気?
治療をせずに放っておくと、最終的には死に至る病気です。
フィラリアが肺動脈や心臓に寄生することによって発生します。
フィラリアは成虫になると最大30cmにもなるソーメンのような糸状の寄生虫です。
たくさん寄生することで、血流の流れが妨げられます。様々な障害が発生し、放置することで死に至ることもあります。
どうやってフィラリア症にかかるの?
①フィラリアの幼虫を持った蚊に刺され、幼虫が体内に入ります。感染幼虫が犬の体内に入ったからといって、すぐに体調に変化がでるものではありません。
②予防薬を投与せずにいると、体内に入った感染幼虫は皮膚の下(筋肉や脂肪の周りなど)で生活しながら、 脱皮を繰り返し、最終寄生場所に移動できる準備を整えます。
③準備ができたフィラリアは血管を通って、心臓や肺の血管に移動していきます。ここまでにおよそ半年はかかるといわれています。
④フィラリアの幼虫は体内で成虫へと発育し肺動脈・心臓に寄生しミクロフィラリア(フィラリアのこども)を産出します。
どんな症状がみられるの?
フィラリアが寄生すると、カラダに様々な症状が…。
初期症状(軽度)
✓ 呼吸が浅く、速くなる
✓ よく咳をする
✓ 食欲不振
✓ 散歩を嫌がる
進行症状(重度)
✓ 重度の貧血
✓ 寝てばかりいる
✓ お腹に水がたまる(腹水)
✓ 血尿
多くの成虫はひっそりと暮らしていますが、長い時間を経て、肺の血管や心臓の内面を傷つけていきます。
その結果、体中に血液を送り出す心臓や肺の働きが邪魔されてしまい、「乾いた咳をする」、「運動をいやがる」などの軽い症状から、腎臓や肝臓の働きまで影響が出ることで、より深刻な症状がみられるようになってきます。
ひっそりと暮らしていたフィラリアが突然に暴れだし、急激な症状の悪化がみられることがあります。 この場合、救急治療が必要になります。
フィラリア予防前になぜ検査が必要なの?
まずは血液検査から!
予防薬を投与する際、フィラリアが寄生していないことを確認する必要性があります。
血液検査で調べることが可能です。
フィラリア成虫より産出されたミクロフィラリアが体内にいうことを知らずに予防薬を飲ませた場合、最悪死に至る可能性があります。
少量の血液ですぐに結果が出ます。
予防はどうしたらいいの?
フィラリアの幼虫を駆除する予防薬を投与します
予防薬は体内で成長途中の幼虫を成虫になる前に駆除するお薬です。
内服薬・滴下薬によるフィラリア症の予防のポイントは、2つあります。
です。
✓ 予防のタイミング
始めるタイミング……蚊が飛ぶようになってから1ヶ月後から
終えるタイミング……蚊がいなくなってから1ヵ月後まで
✓ ここに注意!
「蚊を見なくなった」「涼しくなった」と勝手に自己判断して投薬をやめてしまうと、フィラリアが寄生してしまう可能性があります。投薬時期は自ら判断せずに、ご相談ください。
フィラリアが体内に入ってから心臓や肺の血管に移動する準備が整うまでに2ヶ月くらいかかります。フィラリアの感染幼虫が体内に入っても、これらが皮膚の下で生活している間は、犬の体に変化はありません。
体内移動を開始する前に体内のフィラリア虫を確実に全滅させる為、1ヶ月に1度、忘れずに投薬することががとても重要です。