☆去勢手術のメリット・デメリット、手術のタイミングなどについてお答えします☆
去勢手術は望まれない妊娠を避けるだけではなく、
生殖器の病気や性ホルモンによって起こる病気を予防することができます。
〈主な目的〉
□望まれない交配による妊娠を避ける
□生殖器の病気・性ホルモンに関連した問題行動を抑制する
前立腺肥大症、精巣腫瘍、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫など
□性ホルモンに関連した問題行動を抑制する
スプレー行動、攻撃性、 マウンティング行動など
【前立腺肥大症】
:高齢のオス犬に多く見られ、精巣から分泌される性ホルモンによって前立腺が大きくなり、血尿や排便障害などの症状を引き起こす病気です。
【精巣腫瘍】
:通常犬では、生後30日、猫では生後21日かけて精巣が陰嚢内に下降しますが、そのままおなかにとどまってしまうことがあり、それを潜在精巣と呼びます。
おなかにとどまっていても性ホルモンの分泌は行われます。おなかにある精巣は、陰嚢の中にある精巣よりも約10倍の確率で腫瘍化しやすいといわれています。一部の腫瘍は悪性で転移することもあるので注意しましょう。
高齢になるにつれ、発症のリスクが高くなるので早めの去勢手術が推奨されます。
※臓器画像出ます。苦手な方はご注意ください。
▲潜在精巣は正常睾丸に比べると小さく、未発達のことが多いです。
【性ホルモンによる問題行動の抑制】
:オス犬はマーキングのため頻繁にいろいろなところでおしっこをしたり、他のオス犬への攻撃性を持つことがあります。さらに、性的な不満足さから飼い主や物に対してマウンティング行動をおこしたりします。
オス猫は発情がくると他のオス猫に攻撃性を持ったり、マーキングのためスプレー行動をしたり、外へ出たがるようになります。
これらの問題行動も一度学習してしまうと、去勢手術によって性ホルモンの分泌がなくなっても抑制することが難しくなります。そのため、これらの問題行動を抑制するためには、若齢期に去勢手術をしたほうがいいとされています。
またオスとメスが同居している場合や近所から異性の匂いがしてくる場合、ストレスの原因となることがあります。
去勢手術を行うことで、これらのストレスを除去し、精神的に安定させてあげることができます。
①麻酔
全身麻酔を必要とするため、リスクは0%であるとはいえません。
中には麻酔に対してアレルギーを持っている場合や、フレンチブルドッグ、パグ、ボストンテリアなどの短頭種では呼吸器の問題が起こりやすいので注意が必要です。
②肥満
避妊手術後は、基礎代謝率の減少によりカロリー要求量が減るので肥満になりやすい傾向があります。肥満になると糖尿病や関節炎になりやすいので注意が必要です。
③縫合糸のアレルギー反応
手術時の縫合糸によって異物反応が過剰に起こり、アレルギー反応が出てしまうことがあります。ミニチュア・ダックスフンドにおいてこの反応が起こりやすいと言われています。
歯が生え変わる6か月齢以降が目安とされていますが、健康であればいつでも手術を行うことは可能です。ただ性ホルモンによる問題行動は、その問題行動を起こした期間が長いほど手術後改善が見られないことが多いです。
そのため、手術を行う時期は生後6〜7ヶ月齢前後が望ましいと考えられます。
もちろん健康であれば成犬や成猫、また高齢になってからでも手術を実施することは可能です。繁殖の予定がない場合、ぜひ一度去勢手術について一度当院にご相談ください。
※乳歯遺残がある場合は、去勢手術と同時に抜歯することができます。
乳歯遺残はそのまま放置すると歯垢が付着しやすく、歯周病を招くことも。
自然に抜けない場合は抜歯を推奨いたします。去勢手術と同時に抜歯処置を行うことで、麻酔の回数を減らし身体への負担を軽減します。
▲乳歯遺残
7か月齢のわんちゃんですが、すでに歯垢が付着しはじめています(→赤矢印部分)
前述のとおり、避妊・去勢手術後は太りやすくなることが知られています。
そのため、摂取カロリーに気を付ける必要があります。
手術を受けた犬や猫専用のフードもありますので当院ににご相談ください。
手術の流れに関しては
【避妊・去勢手術の流れ】をご一読ください。