☆避妊手術のメリット・デメリット、手術のタイミングなどについてお答えします☆
避妊手術は望まれない妊娠を避けるだけではなく、
生殖器の病気や性ホルモンによって起こる病気を予防することができます。
〈主な目的〉
- 望まれない交配による妊娠を避ける
- 生殖器の病気・性ホルモンに関連した問題行動を抑制する
子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、子宮・膣腫瘍、腟脱、偽妊娠など
- 性ホルモンに関連した問題行動を抑制する
発情徴候(外陰部からの出血、鳴き声など)、マウンティング行動など
【子宮蓄膿症】
子宮内に細菌感染が起こり、膿がたまる病気です。出産経験がない高齢のメス犬に多く見られます。性ホルモンが長期間子宮に作用することで子宮が細菌感染を起こしやすくなることが分かっています。治療が遅れると死に至ることもある怖い病気です。
※臓器画像出ます。苦手な方はご注意ください。
▲ソーセージ様に腫大した子宮
中からは大量の膿が排出されました。
【乳腺腫瘍】
乳腺の組織の一部が腫瘍化してしこりができる病気です。
犬の乳腺腫瘍の半数が良性・半数が悪性、
猫の乳腺腫瘍の80〜90%が悪性と言われています。
乳腺腫瘍の発生には性ホルモンと深い関係があると言われており、
犬では避妊手術時期によって発症率に違いが出ることがわかっています。
初回発情前に避妊手術を受けると乳腺腫瘍の発生率は0.5%と言われています。
猫でも早期に避妊手術を行ったほうが乳腺癌発症のリスクの減少がみられることが報告されています。
性ホルモンによって引き起こされる病気は時に命の危険を伴うことがあります。
なるべく早期に避妊手術を行うことによって多くの性ホルモンに関連した病気を予防することができます。
▲乳腺腫瘍
自壊しており、浸出液と出血がみられました。
①麻酔
全身麻酔を必要とするため、リスクは0%であるとはいえません。
中には麻酔に対してアレルギーを持っている場合や、フレンチブルドッグ、パグ、ボストンテリアなどの短頭種では呼吸器の問題が起こりやすいので注意が必要です。
②肥満
避妊手術後は、基礎代謝率の減少によりカロリー要求量が減るので肥満になりやすい傾向があります。肥満になると糖尿病や関節炎になりやすいので注意が必要です。
③尿もれ
大型犬では、副作用として尿もれが起こることがあります。
小型犬の発症率は少ないと言われています。
④縫合糸のアレルギー反応
手術時の縫合糸によって異物反応が過剰に起こり、アレルギー反応が出てしまうことがあります。ミニチュア・ダックスフンドにおいてこの反応が起こりやすいと言われています。
歯が生え変わる6か月齢以降が目安とされていますが、健康であればいつでも手術を行うことは可能です。
ただ乳腺腫瘍の発生率は初回発情が起こる前に実施したほうが低くなることがわかっています。
また、性ホルモンによる問題行動は、その問題行動を起こした期間が長いほど手術後改善が見られないことが多いです。
そのため、手術を行う時期は生後6〜7ヶ月齢前後が望ましいと考えられます。
もちろん健康であれば成犬や成猫、また高齢になってからでも手術を実施することは可能です。繁殖の予定がない場合、ぜひ一度避妊手術について一度当院にご相談ください。
※乳歯遺残がある場合は、避妊手術と同時に抜歯することができます。乳歯遺残はそのまま放置すると歯垢が付着しやすく、歯周病を招くことも。
自然に抜けない場合は抜歯を推奨いたします。避妊手術と同時に抜歯処置を行うことで、麻酔の回数を減らし身体への負担を軽減します。
▲乳歯遺残
7か月齢のわんちゃんですが、すでに歯垢が付着しはじめています(➡赤矢印部分)
前述のとおり、避妊・去勢手術後は太りやすくなることが知られています。
そのため、摂取カロリーに気を付ける必要があります。
手術を受けた犬や猫専用のフードもありますので当院ににご相談ください。
※ 避妊手術の流れに関しては
【避妊・去勢手術の流れ】もご一読ください。