こんにちは。院長の石村拓也です🩺
花粉のシーズンが到来しましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?🌸😷🌲
さて前回、“トイプードルで多く見られる皮膚疾患”についてお話させていただきましたが、いかがでしたか?
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犬種ごとになりやすい皮膚病は異なります😌
今回は、最近海外でも人気な犬種“柴犬で多い皮膚疾患”についてお話させていただきます👨⚕️🐶
柴犬
日本原産の日本犬
柴は日本原産の日本犬の一種で、山岳地帯で小動物や鳥の猟犬として活躍していました。
現在は主に家庭犬として、日本はもちろんのこと、海外でも人気が高い犬種です。
柴の性格は、一般的に飼い主に対して忠実ですが、飼い主以外には警戒心が強く感覚は鋭敏です。
特徴① 皮膚
柴犬は、他犬種と比べて皮膚が弱いと言われることが多いです。
これは、皮膚のバリア機能の低下が原因ではないかと言われています。
外部の様々なアレルゲンや異物が皮膚の中に侵入するのを防いだり、体内の水分の蒸発を防いだりする働きのことです。このバリア機能が低下するとアレルゲンが皮膚の中に侵入しやすく、さらに炎症を引き起こしやすくなります。
特徴② 被毛
毛は固くまっすぐなトップコートと細く柔らかいアンダーコートから構成されています。この構造をダブルコートといい、寒い地域出身の犬によくある被毛のタイプです。
春と秋に気温の変化に対応するため、毛の生え変わり(換毛期)が見られます。抜け毛は多く、特に換毛期の抜け毛は柔らかい下毛がごっそりと抜けるので、こまめなブラッシングが必要です。
犬アトピー性皮膚炎
柴犬で多い皮膚疾患…といえば、日本の獣医師ならすぐこの病気を思いつくのではないでしょうか?
そう!“犬アトピー性皮膚炎”です。
犬アトピー性皮膚炎は、ヒトのアトピー性皮膚炎に症状が似ているところから、その名前が付けられています。
ヒトにおいてアトピー性皮膚炎は次のように言われています。
“繰り返す痒みを伴う皮膚炎であり、患者の多くはアトピー素因を持つ”…
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、つまり、アトピー性皮膚炎は、
“ものすごく痒くて、良くなったり悪くなったりを繰り返し、遺伝や体質によるものが大きい病気”
なんです。
犬のアトピー性皮膚炎はヒトのアトピー性皮膚炎と類似する病気なので、やはり同じことが言えますそしてアトピー性皮膚炎は、環境抗原(アレルゲン)に対してアレルギー反応を起こしやすいとされています。
環境抗原(アレルゲン)ってなんだと思いますか?これは普段生活している環境の中にある物質で、アレルギーの原因となりうるもの。例えばダニ、花粉、ハウスダスト、細菌、カビ・・・などをさします😷🌲
しかし体質としてアレルギーを起こしやすいからだだとしても、本来アレルゲンは皮膚からは侵入できない物質です。アレルゲンが皮膚から侵入しなければ、アレルギー反応も起こさないはずなのに、なぜ反応が起きてしまうのでしょうか?
それにはもう一つの原因が関係しています。
アトピーの患者さんの皮膚は、生まれつき“バリア機能が弱い”といわれています。
皮膚バリア機能が低下した皮膚では、アレルゲンが皮膚の中に侵入しやすく、結果アレルギー反応を引き起こしてしまうのです。
このように犬アトピー性皮膚炎は、体質が関係しているため、若くから発症し生涯付き合っていく必要があるため、継続した治療が必要となります💊
治療はわんちゃんの体質、飼主様とわんちゃんとの生活を考えたうえで、さまざまな治療法を組み合わせて行います。具体的にはアレルゲンの回避、二次感染のコントロール、炎症の管理(痒みを抑える)、皮膚のバリア機能の維持(=スキンケアやサプリメントなど)などを行います。
「どのレベルまで行うか」はわんちゃんの性格、生活環境、飼主様の生活環境などを考え、個々に決めていくため、“これが正解!”っていうのはありません。治療のメニューはオーダーメイドとなります。
■ 犬アトピー性皮膚炎を起こしやすい犬種
柴犬の他にも、シーズー、プードル、ダックスフンド、フレンチブルドッグなどで発症が多いです。
■ 犬アトピー性皮膚炎の診断
犬アトピー性皮膚炎の診断を行うことができる特定の検査はありません。
まずは、症状が犬アトピー性皮膚炎と似ている疾患(ノミの寄生、膿皮症、マラセチア性皮膚炎、食物アレルギーなど)を除外します。
STEP1
ノミの寄生の除外
STEP2
その他の外部寄生虫の除外
STEP3
膿皮症やマラセチア性皮膚炎の除外
STEP4
食物アレルギーの除外
犬アトピー性皮膚炎と診断
また症状が犬アトピー性皮膚炎の診断基準に合致するかの確認を行います。(8項目中5項目合致する場合、犬アトピー性皮膚炎である可能性が高いです)
✏〈診断基準〉
①3歳以下での発症
②主に室内で飼育
③ステロイド剤で痒みが治まる
④マラセチア性皮膚炎に繰り返しかかる
⑤前肢に症状がある
⑥耳介の外側に症状がある
⑦耳の辺縁には症状がない
⑧背中~腰部に症状がない
犬アトピー性皮膚炎の診断にはこのような診断ステップが必要であり、確定診断するためには、通常2~3か月かかる場合が多いです。
こんなに時間がかかるの…😥?とお感じの方も多いと思います。
しかし犬アトピー性皮膚炎の治療とは長く付き合っていかなくてはなりません。つらい痒みと長く付き合っていくためにも、2~3か月かけて、1つずつ検証して確実に診断することをお勧めします👨⚕️
また、アレルギー検査💉を実施することもありますが、これはあくまで補助的な診断で確定診断できるものではありません。世界的な犬アトピー性皮膚炎の診断のガイドラインには現時点では組み込まれておらず、結果は治療の参考として使用します。
■ 犬アトピー性皮膚炎の治療方法
犬アトピー性皮膚炎は様々な因子が複雑に関与して発生し、他の皮膚トラブルも併発することが多いです。そのため、わんちゃんごとにオーダーメイドで多面的な治療を行っていく必要があります。また、生涯付き合って行く必要があるため、治療は長期間続けても体に負担がかからないようにする必要があります。わんちゃんの性格や環境を考慮し、一緒に相談しながら治療法を作っていきましょう。
● アレルゲンの回避
犬アトピー性皮膚炎の主要な環境抗原(アレルゲン)のひとつに室内ダニが挙げられます。室内ダニを減らすことで症状が改善した、というデータがあります。
室内ダニを完全に除去することは困難であると考えますが減らす努力はできると思います。環境の清掃や洗浄、ダニ駆除剤や防ダニ加工のベッド、アレルゲンが付着するのを防ぐ犬用の服、空気清浄器の使用などもおすすめです🧹
● 二次感染のコントロール
アトピー性皮膚炎では、膿皮症(細菌の増殖による皮膚炎)やマラセチア性皮膚炎(マラセチアの増殖による皮膚炎)などの感染症を二次的に併発することがよくあります。感染症のコントロールができないと、皮膚の状態はさらに悪化します😣
これらの感染症がある場合は、それぞれの常在微生物に合わせた薬(抗生物質や抗真菌薬など)で治療します💊
二次的な感染症は繰り返すことが多く、増えてしまう要因を探し出し、常在微生物の増殖を抑えることが大切です。
● 炎症を抑える(=痒みを抑える)
ステロイド、免疫抑制剤、分子標的薬、抗ヒスタミン剤、インターフェロン‐γ、減感作療法など。
アトピーのわんちゃんの痒みを完全になくすことは残念ながら難しいです。そこでステロイドをはじめとする痒みの反応を抑える治療を行います💊
“ステロイド”と聞くと副作用が心配な方も多いと思います。確かに、ステロイドを高容量・長期間使用した場合、副作用が起こりえますが、正しく使えばあまり問題になることはありません。ステロイドも使い方次第なのです。
また、近年ステロイドにとって代わる薬がどんどん開発され、治療の選択肢が増えています。各薬においてメリット、デメリットが存在します。ご相談ください👨⚕️
● スキンケア(皮膚バリア機能の維持)
皮膚の表面に付着した環境アレルゲンの除去にシャンプーは有効な方法です。アトピーのしかし、アトピーの子の皮膚はバリア機能が低下しているため、洗浄成分には充分注意しなければなりません。
そのため、アトピーのわんちゃんには保湿成分を含んだ刺激性の低い(アミノ酸系界面活性剤)シャンプー剤がおすすめです。これらは皮膚のバリア機能を高めるというよりかは、皮膚のバリア機能の低下が少ないシャンプーです。
シャンプーをした後の皮膚はバリア機能が低下し、アレルゲンの侵入を容易にし、乾燥傾向になると言われています。保湿成分が入ったシャンプー剤を使用したとしても、シャンプー後は必ず保湿剤を使用しましょう。
セラミド関連物質、ヒアルロン酸、リピジュア、必須脂肪酸、ヘパリン類似物質などの保湿成分が含有されている保湿剤がおすすめです。
シャンプーなどによる洗浄後はもちろんですが、それ以外の日でも積極的に保湿を行いましょう!これにより皮膚症状の緩和が期待できます。
アトピーのわんちゃんでは、脂質代謝に異常がある可能性が示唆されています。必須脂肪酸のバランスが崩れると、皮膚のバリア機能にも異常をきたす可能性があるということです。
実は必須脂肪酸をサプリメントなどで補うことで、アトピーの症状を緩和させることが報告されています。
もちろんサプリメントだけで完治することは難しいですが、併用することでステロイドなどの投薬量の減量を図ることが期待出来ます。
■ まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、柴犬がなりやすい皮膚病に関してお話させていただきました🐶
柴犬は春に換毛期を迎えます🌸抜けた毛をそのままにしておくと皮膚の換気が悪くなり、皮膚のトラブルにつながる可能性があります。そのため、特にこの時期は自宅で定期的にブラッシングを行いましょう!
また、柴犬は他の犬種と異なり、身体を洗われるのを嫌がるコも多いです。病院で指示されたけど、自宅で思うようにシャンプーやスキンケアができない…なんてこともあるかと思います。
そんな時は無理せず、そのコそのコに合わせた治療法を一緒に考えていきましょう。
アトピー性皮膚炎のわんちゃんでお悩みの方はぜひご相談ください。👨⚕️