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【症例報告】前十字靭帯が断裂したわんちゃん

こんにちは。獣医師の石村です👨‍⚕️

“前十字靭帯断裂”という病気をご存じでしょうか🦴❓

犬で見られることの多い、整形外科学的疾患一つです。

前十字靭帯断裂とは、太ももの骨(大腿骨)と、すねの骨(脛骨)を繋ぐ十字靭帯のうち、前十字靭帯が断裂してしまう病気です🦴

今回は前十字靭帯が断裂し、外科手術を実施したわんちゃんをご紹介させていただきます🐶

【症例】

トイ・プードル 12歳 避妊メス

【症状】

左後肢跛行

左の後ろ足を地面に着けることができず、ひょこひょこ歩く

膝関節は以前から両側にあり

【検査】

・問診(臨床症状や歩様の確認)

・身体検査(触診、整形外科的検査)

・レントゲン検査

整形外科的検査とレントゲン検査で左側の前十字靱帯断裂が疑われ、相談の上、外科手術を実施することになりました。

脛骨が前方に移動
脛骨の前方引き出し徴候

【外科手術】

今回は「関節外法」という、体重が軽い小型犬や活動性の低い犬に適した術式を用いて手術を行いました。

これは、人工材料を代替靭帯(人工靭帯)として用い、大腿骨と脛骨を安定化する方法です。

また、同時に膝蓋骨内方脱臼の整復も行いました。

滑車溝形成
手術後

前十字靭帯断裂

■ 犬の前十字靭帯断裂とは?どんな病気?

前十字靭帯とは、膝関節内で大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結ぶ太い靱帯です。脛骨が前方に移動するのを防ぎ膝関節を安定させる働きをしています。

前十字靭帯が損傷を受けると膝関節では強い炎症がおこり、痛みと跛行(はこう)を引き起こします。跛行の程度は様々です。

また前十字靭帯断裂で不安定な関節のまま運動をし続けると、半月板の損傷を合併し、重度な痛みと跛行が長期化する可能性があります。

【分類】

①急性断裂

外傷が原因で生じるタイプです。交通事故やスポーツなどで過剰なエネルギーが膝関節に加わることにより起こります。

ヒトの前十字靭帯損傷ではこのタイプが最も一般的ですが、犬の前十字靭帯断裂では稀です。

②慢性断裂

前十字靭帯がゆっくりと慢性的に変性していくことが原因で生じるタイプです。

前十字靭帯の変性が進行していくと、靭帯は十分な強度を維持できなくなり、普段の運動でも小さな損傷が蓄積していき、部分断裂が生じます。さら悪化を重ねると靭帯の完全断裂に至ります。

犬の前十字靭帯断裂のほとんどがこのタイプです。

【慢性断裂の原因】

靭帯の進行性変性

・肥満

・加齢

・内分泌異常

・炎症性関節疾患

・腫瘍性疾患

など

■ 治療

治療は、「内科的治療法」「外科的治療法」に分けられます。

【内科的治療法】

前十字靭帯損傷があっても、症状が軽度で他の基礎疾患などがある場合、外科手術は行わず、保存療法を行うこともあります。

安静、鎮痛薬、環境の整備、体重管理、サプリメントなどを組み合わせて痛みのコントロールを行いながら、生活の質を維持していく治療法です。

保存療法は根本的な解決にはならず現状維持を目指していく治療法です。関節へのダメージが蓄積し、関節炎を引き起こす可能性はあります。

消炎鎮痛剤など

【外科的治療法】

まず、断裂して不要となった前十字靭帯をトリミングし膝関節内を洗浄します。

その後、不安定な膝関節を安定化させる手術を行います。安定させる術式は様々な方法が考案されていますが、代表的な方法を2つ紹介します。

体重・体格・活動性などを考慮し適切な術式を選択します。

①脛骨高平部水平化骨切り術:TPLO

大型犬・超大型犬にも対応できる強力な術式です。本来傾斜のある脛骨高平部を骨切りし回転して水平にすることで、 体重をかけた時に大腿骨と脛骨がズレないようにする術式です。

 

②関節外法

体重が軽い小型犬や活動性の低い犬に適した術式です。人工材料を代替靭帯(人工靭帯)として用い、大腿骨と脛骨を安定化する方法です。

■ まとめ

前十字靱帯断裂を防ぐには、日常生活の中で膝関節へのダメージを少しでも減らしてあげることが重要です。
体重管理や生活環境(フローリングなど滑りやすい床環境の改善など)に配慮しましょう。

また、跛行のサインが見られたら様子を見ずにすぐ受診してくださいね。

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