こんなところにイボあったっけ?
あれ?大きくなってる?
いつからあった…?
愛犬・愛猫の体に突然現れるできものやしこりにドキッとした経験はありませんか?
ただのニキビのようなものだろう、脂肪の塊だろう、と思いながらも…、検査したところ、実は「肥満細胞腫」だったというケースも見受けられます。
今回は実際の症例も交えながら、肥満細胞腫について紹介させていただきます。
【症例】
- 日本猫
- 年齢 2歳
- 性別 去勢雄
- 症状 ヒゲ付近の腫れ?できもの?
- 病名 皮膚肥満細胞腫
- 治療 外科切除
■ 肥満細胞腫とは?
「肥満細胞腫」とは、犬や猫において最も一般的に見られる悪性腫瘍の一つです。
この病名から「太っていると発病するの?」と肥満に関連していると勘違いされる方もいらっしゃいますが、決してそうではありません 。
この腫瘍は、肥満細胞と呼ばれるアレルギー反応や免疫反応に関与する細胞が、何らかの原因で異常に増殖してしまうことで形成されます。
肥満細胞は本来、体を守るために重要な役割を担っています。しかし、細胞の増殖を調節する仕組みに異常が生じると、肥満細胞が過剰に増殖し、肥満細胞腫を形成することがあります。
特に犬では、皮膚にしこりや小さな腫瘍として現れることが多く、飼い主様・トリマーさん・シッターさんなど、よく身体に触れる機会が多い方が気づくことがよくあります。
肥満細胞腫は見た目が良性の腫瘍と非常によく似ているため、長いこと様子を見たり緊急性は低いだろうと後回しにされてしまったり…というケースが多くあります。
たとえ小さなしこりでも油断は禁物です!!
もしも腫瘍が悪性であれば、早期の治療が予後に大きく影響しますので、早めの対応が重要です。
■ 肥満細胞腫の症状は?
肥満細胞腫は、
①皮膚にできる「皮膚型肥満細胞腫」
②内臓にできる「脾臓型肥満細胞腫」「消化器型肥満細胞腫」
の3つに分類されます。
それぞれのタイプによって症状が異なり、以下のような症状が現れます。
「①皮膚型肥満細胞腫」
・皮膚に腫れやしこりがみられる
・虫刺されのような小さなイボがみられる
・柔らかいもの~硬いものまで様々なしこり
・痒みや痛みが出ることも(放出されたヒスタミンが神経を刺激)
・脱毛
・赤くなって腫れる
・できものの大きさが急に変化する
②脾臓型肥満細胞腫・消化器型肥満細胞腫
・活動量、食欲の低下
・体重減少
・嘔吐
・下痢・メレナ
・貧血
特に猫では内臓型肥満細胞腫が比較的多く見られ、早期発見も難しいため、定期的な健康診断が重要です。
■ 肥満細胞腫の診断方法は?
最も一般的な方法は「細胞診」です。
この検査では、しこりや腫瘍に細い針を刺して細胞を採取し、その細胞を顕微鏡で観察します。この方法によって、腫瘍が肥満細胞腫であるかどうかを判断します。(判断が難しい肥満細胞腫も存在します)
ただし、細胞診だけでは腫瘍の悪性度や正確なグレードを判断することが難しいため、腫瘍の切除手術を行い病理検査を行うことが推奨されます。
病理検査では、腫瘍の性質や悪性度を評価することができます。
また、②の内臓型肥満細胞腫が疑われる場合には、超音波検査やレントゲン検査、CTなどの画像診断も行われることもあります。これらの検査によって、腫瘍の位置や大きさ、さらには他の臓器への転移の有無を確認することができます。
■ 肥満細胞腫の治療方法は?
肥満細胞腫の治療は、腫瘍の悪性度や発生場所、転移の有無に応じて異なりますが、基本的には外科切除が第1選択となります。
(※猫と犬の肥満細胞腫の挙動にはかなり違いがあり、猫の消化管型肥満細胞腫は極悪なので外科が適さない場合もあります。)
「皮膚型肥満細胞腫」
皮膚に発生する肥満細胞腫に対する基本的な治療法は、外科手術による腫瘍の切除です。腫瘍を周囲の正常な組織ごと広範囲に切除することで、再発のリスクを最小限に抑えることができます。特に、腫瘍が小さく、悪性度が低い場合には、手術によって完治が期待できることもあります。
ただし、腫瘍が完全に取りきれなかった場合には、再手術による拡大切除が第1選択となります。
(特に、再手術が難しい部位で顕微鏡的残存がある場合には、術後放射線治療が有力な局所治療となります。)
放射線療法は、手術後の再発防止や取り切れなかった腫瘍に対して有効です。
また、化学療法は広範囲に転移が見られる場合や、悪性度が高い場合の術後の補助療法として、手術や放射線療法が難しいケースで使用されることがあります。
「内臓型肥満細胞腫」
内臓に発生する肥満細胞腫は、特に脾臓や消化管に発生することが多く、これらの場合には外科手術をすることもあります。例えば、脾臓に腫瘍が発生した場合には、脾臓の摘出手術が行われます。
腫瘍が他の臓器に転移していた場合には、追加の治療が必要です。
また、皮膚型肥満細胞腫、消化器型肥満細胞腫ともに、分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの薬が使用されることがあります。
分子標的薬は、肥満細胞腫の発生に関与する特定の遺伝子を標的とし、腫瘍細胞が増えるのを抑えたり、腫瘍を養う血管ができるのを抑える効果があります。この治療法は、従来の抗がん剤とは異なり、健康な細胞に与えるダメージが少ないのが特徴です。
■ まとめ
肥満細胞腫の予防は難しいです。
日々のケアやスキンシップを通じて早期発見やリスクを軽減することは可能です。まず、愛犬や愛猫の体を撫でながら、しこりや異常がないかをこまめにチェックしましょう。もし気になることがあれば、自己判断せずに、早めに動物病院で診てもらうことが大切です。
また、定期的な健康診断は、目に見えない内臓の腫瘍や他の健康問題を早期に見つけるための有効な手段です。
肥満細胞腫だけでなく、あらゆる病気の早期発見早期治療には定期的な健康チェック、半年~1年ごとのcat・dogドックがとても重要となります。
バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることで、免疫力を高めることができます。
そして、愛犬や愛猫がリラックスできる飼育環境を整えることも、健康維持において大切です。こうした日々の積み重ねが、大切な家族の健康を守ることにつながります。
当院では10月~11月に秋の健康診断キャンペーンを実施しています。
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