こんにちは。獣医師の石村です👨⚕️
“胆のう粘液嚢腫”という病気をご存じですか?
これは、胆のうという胆汁を貯める袋に、ゼリー状の物質が溜まってしまう病気です。
症状が進行すると、胆のう炎、閉塞性黄疸、胆のう破裂などの深刻な病気を併発します⚠️
特に胆のう破裂による胆汁性腹膜炎は、命に関わることもある怖い病気です💦
今回はその胆嚢粘液嚢腫になって、手術したわんちゃんについてご紹介させていただきます🐶
【症例】
チワワ 11歳 避妊♀
持病にクッシング症候群と胆泥症があり、内服薬により治療中💊
【稟告】
元気・食欲がない
【症状】
軽度の脱水と可視粘膜にやや黄疸が認められました。
【検査】
血液検査、腹部超音波検査を実施。
【検査結果】
血液検査で肝酵素の上昇、黄疸の指標であるビリルビンの高値が認められました。
また、腹部超音波検査にて、胆のう内に放射状の貯留物が認められ、胆嚢が拡大している所見が見られました。
【手術】
胆嚢摘出手術を実施。
手術写真が出るので、苦手な方はご注意ください⚠️
【経過】
術後は多きな合併症も認められず、肝酵素も下がり順調に回復いたしました。
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)
■ どんな病気?
胆汁を貯めている袋状の臓器である胆のうの病気です。胆のうの中には脂肪の消化吸収の手助けをする胆汁が含まれていますが、この胆汁の流れが悪くなりドロドロとしたゼリー状になってしまうことで起こります。このゼリー状になった胆汁を含んだ胆のうを超音波検査で見ると、キウイフルーツの断面のように見えることがあります🥝これは胆のう粘液嚢腫に特徴的な所見です。
胆汁の流れが悪くなると、胆のう炎や胆管炎と言った病気を引き起こし、食欲不振や嘔吐、さらには黄疸などの症状がみられます。また、胆のうが破裂し腹膜炎を起こして死んでしまうこともあるとても怖い病気です⚠️💦
■ なんでなるの?
胆汁の排出が悪くなる要因として、犬種の遺伝的なもの(シュナウザーやシェルティーに多い)や高脂血症、クッシング症候群や甲状腺機能低下症と言った内分泌疾患などが関わっていると言われています。
■ 治療法は?
今のところ、治療の第一選択は外科的な胆のう摘出術であると考えられています。ただ、肝胆道系疾患の手術はリスクも高く、なかなか手術に踏み込めない場合も多いのも現状です。
また、併発疾患(内分泌疾患など)がある場合は、そちらのコントロールをするのも重要です。
うまく内科療法で維持できる場合もあるので、緊急を要する状況でなければ、外科手術に伴うリスクを十分に検討し飼い主さまとじっくり話し合うことが大事だと捉えています👨⚕️