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症例報告【股関節形成不全】

こんにちは。獣医師の石村です👨‍⚕️

“股関節形成不全”という病気をご存じでしょうか🦴❓

主に大型犬種に高率に発生する整形外科学的疾患の一つです。

股関節の緩みが根本的な原因となり、股関節が異常に形成されていく病気です🐶

最近では大型犬だけではなく、小型犬や猫においても発症が報告されています。

今回はその股関節形成不全外科手術で治療したわんちゃんについてご紹介させていただきます🐶

【症例】

ポメラニアン 4歳 去勢オス

【症状】

後肢跛行

歩く際、たまに後ろ足を痛そうに挙げることがある。

【検査】

・問診(臨床症状や歩様の確認)

・身体検査(股関節の触診、整形外科的検査)

・レントゲン検査

レントゲン検査では、鎮静処置が必要な場合があります。

これは筋肉に力が入っていると、正確な評価ができないためです。

鎮静下でのレントゲン検査で、股関節のゆるみを認めました。

鎮静前(股関節がしっかりはまって見える)
鎮静後(股関節のゆるみがわかる)

【処置】

飼い主様と相談の上、両側の大腿骨頭切除術を実施しました。

大腿骨頭を取り除くことにより、痛みの原因となっている股関節の反復的な摩擦を防ぐことを目的としています。

股関節形成不全

■ どんな病気?

好発犬種

・ラブラドール・レトリバー

・ゴールデン・レトリバー

・スタンダードプードル

・オーストラリアン・ドゥードゥル

・セント・バーナード

・バーニーズ・マウンテンドッグ

・ジャーマン・シェパード・ドッグ

・ロットワイラーなど

大型犬種超大型犬に好発しますが、最近では小型犬でも発生が報告されています。

【症状】

この病気の特徴的な症状は、“後肢のふらつき”です。

他にも、

散歩を嫌がる

・散歩の途中に座りたがる

・寝ている状態から起き上がってからの歩様がおかしい

・長距離を歩けない

・段差をいやがる

などの症状も出ることがあります。

■ 治療

治療は、「内科的治療法」「外科的治療法」に分けられます。

どちらの治療法を選択したとしても、体重制限運動制限、そして滑りやすい場所にマットを敷くなどして整備するなど、環境要因の整備を含めた保存療法が必須となります。

【内科的治療法】

薬物を投与することにより疼痛を軽減することを目的として行います。

その目的からわかるように、股関節形成不全の主要な原因と考えられる股関節の緩みを矯正せず、障害された関節を回復させないため、根本的な治療とはなりません

薬物の投与により疼痛を軽減させることは可能であり、管理が奏功した場合には薬物の投与を必要としなくなる可能性もあります。

消炎鎮痛剤など

【外科的治療法】

🏥予防的な外科治療として

・恥骨結合融合術

・三点骨盤骨切り術

🏥疼痛緩和が目的の外科治療として

・股関節全置換術(人工関節との入れ替え)

大腿骨頭切除術(痛みが出ている骨の切除)

などが挙げられます。

症状や月齢などによって、手術方法は変わってきます。

切除した大腿骨頭

【予防】

股関節形成不全遺伝性疾患のため、完全に予防することは困難です💦

しかし肥満も原因になるため、バランスの取れた食事適度な運動体重管理を行うことは予防につながるでしょう。

■ まとめ

大型犬で発症が多い「股関節形成不全」という病気。

最近、小型犬でも実は多いんだなという印象を受けています。

歩き方がおかしいなどの症状がありましたら、ぜひご相談ください。

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