こんにちは。獣医師の石村です
“短頭種気道症候群”という病気をご存じですか?フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストン・テリアなどのマズルが短い短頭種によく認められる解剖学的特徴に伴い、呼吸器系のトラブルが引き起こされる病態を言います。
今回はその短頭種気道症候群を外科手術で治したわんちゃんについてご紹介させていただきます🐶

短頭種気道症候群
短頭種は、人間による品種改良の結果生み出され、解剖学的・形態学的に特徴的な構造をしています。他の品種に比べ、マズルが極端に短く、頭蓋骨は丸く、両眼が離れていますね🐶
この鼻ぺちゃがとてつもな〜く可愛いのですが、このお顔のせいで生まれつき呼吸器系に問題を抱えているのです。。
「短頭種気道症候群」とは、短頭種特有の呼吸器に関わる解剖学的構造が原因で起こる気道障害の総称を言います。
【短頭種気道症候群が起こりやすい犬種】
・フレンチ・ブルドッグ
・パグ
・ボストン・テリア
・ブル・ドッグ
・シー・ズー
・ペキニーズ
など
【症状】
・異常な呼吸音
-ズーズー、ブーブー
-ガーガー
・睡眠時のいびき
・呼吸困難
・運動不耐性(疲れやすい)
・チアノーゼ(舌が青紫色に)
・体温上昇
・消化器兆候
・咳・えずき
【短頭種気道症候群で認められる病態】
・軟口蓋過長(最も多く見られる)
・外鼻孔の狭窄
・喉頭小嚢の外反
・喉頭虚脱
・扁桃の腫大
・気管低形成
これらが単一もしくは複合して発症します

※👨⚕️「軟口蓋過長症」とは💡❓
軟口蓋は鼻腔と口腔を分けている軟部組織です。食べ物が誤って鼻腔へ侵入しないように閉鎖する役割を担っています。
短頭種ではこの軟口蓋が長いだけでなく肥厚しており咽喉頭部を占拠してます。これにより気道を塞いで呼吸を妨げてしまいます。
【治療】
短頭種気道症候群の治療は、基本的に外科的治療が行われます🏥
鼻の穴が狭く小さい場合(外鼻孔狭窄)には、鼻の穴を広げる手術を行います。
軟口蓋という部分が気道を狭くしているようなら(軟口蓋過長症)、軟口蓋の一部を切除します。
気道の一部の器官の構造が気道を狭めている場合には、その部分を切除します。



【予防】
生まれつきの解剖学的特徴が原因のため、予防方法はありません。
短頭種気道症候群の犬は、換気がうまくできずに熱が体内にこもり、熱中症になりやすいです⚠️犬の様子をよく観察し、早めの対処と環境をよく整えることが大切です。
また、肥満も呼吸状態の悪化につながるので、体重管理もしっかりと行う必要があります。
いずれ悪化する可能性が十分にあるため、重症化する前に対処することがお勧めします。
■ まとめ
短頭種気道症候群は解剖学的な問題なので、家庭でのケアでできることには限界がある場合もあります。
症状がひどい場合は家庭だけで抱え込もうとせず、早期に動物病院に相談することをおすすめします。抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、二次的な変化が起こる前に外科手術を行うことも、愛犬の健康を守る方法のひとつと考えてほしいです👨⚕️
